椿井の女
椿井の女




オンナハ 椿ノ花ヲ ハランダ                 音楽テーマ
                                   動き静止


ある時、こんな話を耳にした                  音楽オフ
                                   動き静止
二軒長屋の間に
椿に覆われた井戸がある
女はしきりと洗い物
何度も何度も水をくみ
ざぁーざぁーと
水口には椿の花
赤く
くみ水まで赤い                          音楽~音ボイスひと呼吸
               
二軒長屋の間に
椿に覆われた井戸がある
女はしきりと洗い物
しだいに手もすそも赤くなっている
ざぁーざぁーと
水の音ではない
女の泣く声であった
                                    音楽~音ボイスひと呼吸
二軒長屋の間に
椿に覆われた井戸がある
女はしきりと洗い物
何度も何度も水をくみ
ざぁーざぁーと
赤い水は
血であった

二軒長屋の間に                         音楽~音ボイスひと呼吸
椿に覆われた井戸がある
女はしきりと洗い物
何度も何度も水をくみ
ざぁーざぁーと
からだを洗う
赤く犯されたからだを洗う

二軒長屋の間に                         音楽~音ボイスひと呼吸
椿に覆われた井戸がある
女はしきりと洗い物
何度も何度も水をくみ
ざぁーざぁーと
泪を洗う
乾いた唇を洗う

二軒長屋の間に                            音楽~音ボイスひと呼吸
椿に覆われた井戸がある
女はしきりと洗い物
何度も何度も水をくみ
ざぁーざぁーと
心を洗う
陵辱された心を洗う

二軒長屋の間に                            音楽~音ボイスひと呼吸
椿に覆われた井戸がある
ざぁーざぁーと
女は泣きながら
その井戸に
血の色の着物を捨て
乾いた泪を捨て
心を捨て
身投げした



ざぁーざぁーと
狂おしい椿の赤い花が
井戸に散り降るように落ちた                       音楽テーマ
                                         動き







その後、長屋はなくなったが椿の井戸は残った
それからはここを椿井と人は呼ぶようになった


オンナハ 椿ノ花ヲ ハランダ                      音楽オフ
                                         動きオフ


ある時、こんな話を耳にした

二軒長屋の間に椿に覆われた井戸がある
その井戸にひとりの男が棲んでいる
齢およそ六十
春に散り降る椿を食し
身は樹木のごときにして
声発すれど人の声あらず
手足不要にして卯杖のごとし

二軒長屋の間に椿に覆われた井戸がある
その井戸にひとりの男が棲んでいる
見上げればまるい空
雨水おつれど
陽届かず
風見えず
卯杖ふりて
時の罪を祓う

二軒長屋の間に椿に覆われた井戸がある
その井戸にひとりの男が棲んでいる
春に散り降る椿を食し
乾いた唇に赤い手
赤い血の色の着物をまとっているとのこと

二軒長屋の間に椿に覆われた井戸がある
その井戸にひとりの男が棲んでいる

夜毎女の子守唄
赤い赤い椿の子
泣くのはおよしよ
ねんねしな
赤い赤い椿の子
泣くのはおよしよ
ねんねしな

夜毎女の子守唄
赤い赤い椿の子
泣くのはおよしよ
ねんねしな
赤い赤い椿の子
泣くのはおよしよ
ねんねしな
                                        2010・6・20
                                        高橋秀夫
                                        2010・9・12加筆訂正
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by hidesannno | 2012-02-20 22:11

随筆と詩歌
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