夢を編む6
 夢を編む 6                    高橋秀夫




  土ヨリ生ジ 土ニ帰ス -いのちのゆめー


 神戸のポートアイランドに行く機会があった。18年前の震災の時、液状化して大変だったところだ。そこは、その昔「山、海に行く」と言われ、六甲山の土で埋め立てられた海の人工島だ。
 削られた山肌に新たな町ができ、人工島に遊園地や工場ができ、整備された道路に街路樹が規則正しく植えられ、葉を落とした木々はいのちを失くした無口な造花のように見えたのは失礼だろうか。
 宮沢賢治の童話(狼森と笊森、盗森)にある「ここへ畑起してもいいかぁ」「いいぞぉ」と山に伺いを乞うつつましい男たちの姿と森との問答とは違う人間の様が思い浮かんでくる。
 このポートアイランドのように埋め立て地といわれる所は日本の領土の0.5%にあたるといわれるそうだ。そして、多くはゴミを埋めて造られたという。東京湾岸は夢の島を始め人間の排泄物でつくられてきた。東北の震災でのおびただしい液状化は今も深刻な事態である。
 私達が考える時間など及ばない自然の生態系が生んできた大地とはほど遠いものであることが惨事で気づかされるのはあまりににも皮肉な極みである。

 ゴミの問題は石油製品などない江戸時代から悩みの種であったようだ。花のお江戸からのゴミの処分はそれこそ河川、海への投棄、その惨状から埋め立ての人工島が造られていったと聞きます。
しかし、日本では生ごみ、糞尿は作物の肥料として使っていた知恵はさすがである。
それこそ、ヨーロッパでは「ガーディ・ロー(そら、水がいくぞ)」と叫んで糞尿を道に放っていたというから大変なことだ。
 僕が小さい頃はまだまだ肥溜めなるものが残っていて柄杓で畑にまく風景は記憶にある。
間違って、落ちようもんならそれこそ一大事。鼻をつまんで走り抜けた思い出がある。もちろん、大正時代に化学肥料が作柄向上施策で登場してからはめっきり減少していった「肥料」で、今では皆無に近いことでしょう。
田舎の香水と呼ばれたなつかしき田園風景である。

 有機農業なるものが現われ、鶏糞、豚ぷん、牛糞が使われたが人糞はひのめをみず汚物として処理されるようになっていった。循環型生活スタイルの江戸の知恵は人智の公衆衛生感と身勝手な美意識によって有効利用されていたサイクルは消えていった。まあ、そう単純な問題だけではないと思うが。
 たしかに、紙は捨てないでという便所が山村に行った時あった。移動式で溜まるとそれを発酵させ肥料として使っていたのでしょう。

 奈良に来て2,3年だが畑を借りて素人百姓していたことがある。
八百屋のお客さんから生ゴミを集め、堆肥にして野菜を作った。
生産ー消費ー生産と暮すことの実感の試みでした。
それはお客さんの台所から野菜の名残りが戻ってきて、土に戻り、そして、また食べ物として結実してゆく。
 糞尿とはいかないが目に見える関係が食卓や畑を楽しい広場にしたものでした。
 ただ、うまく野菜づくりが出来なかった、僕の技術的問題も大いにあったが。
それでも、どのお客さんも大事にそして、丁寧に料理ししてくれたことは何よりなことでした。
 土からできたものが人の手をめぐり、また、土に戻り、そして繰り返される。
このことは消費して消えていく直線的な方向ではなく、円を描く生命のリズムに似たものであったような気がしていました。。
それは、みんな「人間家族」って感じでしたね。


 生ゴミなど燃やせるものはまだ何とかなる。しかし、今はそうはいかない。ビニール製品、化学合成製品、朽ちた瓦礫、燃やしたら猛毒ダイオキシンを撒き散らすモノ・・便利で安易な生活器具、ネジ一つ取れたら捨ててしまい、直すより新しいもの買った方がお得と勧められ使い捨ててしまう。
リサイクル法ができて簡単には捨てられなくなったが、お金をちょっと出せばゴミ問題の加害者から猶予される。むしろ、これを埋めて遊園地ができると「夢の島」伝説を持ち出す。

 60年代に始まった都市の「ゴミ戦争」は終息することなく今もなお続いている。
そして、ついに全く手に負えないゴミに私達は直面している。

 核のゴミである。

 地下深く埋める計画が有力と称されている。
 現代版「夢の島」になるであろうか。



 緑の草木で縁取り、道の街路樹にどんなお花が咲くかしら。

 風とお話する花かしら。

 黒い無口な花かしら。

 蝶ちょに蜜をあげるかしら。

 夏の日陰にベンチができて、どなたが口笛吹くかしら。

 秋に成る実はあるかしら。

 冬に巣箱に暮す小鳥はどこからくるかしら。

 春にポキリと落ちました。

 いのちのゆめが落ちました。


                            2013.2.20  ひで

 



 
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by hidesannno | 2013-02-21 06:36

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