イサムはエメラルド色のバスで
なまえのない新聞No.171/2012年3・4月号(11)より


野火の煙が平たい田んぼにふたつみっつ

と上っていた。

稲刈りが済んだ田んぼには馬のようにみ

える稲積が雲みたいな野火の煙の中できら

りと時おり光っている。

ガタン、シュウーとその煙か靄の中にエ

メラルド色のバスが止まった。

あたりはさらに白いけむりか靄がぼっー

と広がっている。

すると、どこから現れたのか背の高い、

長髪の男が吸い込まれるようにそのバスに

消えた。

しばらく、煌々とまぶしいほどの光の帯

が虹のように広がり、あたりは輝いていた。

エメラルド色のバスはやわらかい生き物

のように男を迎え入れた。

やがて、ヒューと発車の合図がしたかと

思うとそのまま宙に浮き上がった。

そして、ガタン、シュウーと白い靄をか

き消すように

エメラルド色のバスは動き始

めた。

僕は前にいた女に尋ねた。

「あれは誰だい」

女は振り返りもしないでこうつぶやいた。

「イサムだよ。秋野イサム。また、出か

けちゃったよ。」

と、女はにこりとしながら振り向いた。

すると、バスも靄もすっーと消えて、ま

た、稲積と野火の田んぼが女の後ろに広が

っていた。


2011年11月23日秋野亥左牟76
歳の旅だち。
秋野亥左牟は絵描き。10年単位で一冊
の絵本を描く何とも希有な男であった。何
故そんなに時間をかけるのか、不思議であ
った。彼と初めて会ったのはいまから20
年ほど前である。沖縄の小浜島から広島に
移ってきた時で、仲間うちではよく知られ
ていてインド、カナダと16年も旅してき
た男であると。
この時、一冊の絵本にそれだけ時間をか
けるのかがわかった。彼の旅はちょっとし
た旅行とは全く違う。
その場所に住んでしまうのだ。3年、4
年とそこでその地に暮らし、絵を描く。だ
から、時間がかかるのである。
彼の行き先は近代都市ではない、アニミ
ズムの精神文化を今でもこころの糧にして
暮す地にその足は向かう。そこで、彼が気
づくことはわたし達の現在の生活の様がい
かに人間の都合で築かれたことであるとい
う、その歴史である。かれの残した旅の絵
巻にはおびただしい人間のエゴとそれに抵
抗しながら自然の一部であるとわきまえて
くらす美しい大地と生き物が相関図のよう
に描かれている。彼はその地でじっと自分
のありようを探し、失くした尊い生活文化
を見つめ苦悩した図でもある。
この彼,
イサ
ムの旅と彼、イサムの残した絵は貴重なも
うひとつの歴史書である。
残念なのは彼の故郷である「ニッポン」
が描かれず仕舞いであったことだ。
また、以前出版され絶版になっていた
「イサム・オン・ザロード」が再編集されて
この春、梨の木舎から新たに出版されます。
イサムの貴重な自叙伝でもある「イサム・
オンザ・ロード」が多くの心ある方々と次
代の若者に読まれることは実にうれしいこ
とである。
さらに、この春(4月3日〜4月8日)
京都の堺町画廊で秋野亥左牟生誕を記念し
て「イサムオンザロード〜おれはここを歩
く」の催しが予定されています。(くわしく
は別記)
秋野亥左牟をあの世から呼び、歌を、笛
を鳴らし酒を飲みましょうか。



僕は女に促されて石畳の道を登った。

古い農家が現れた。彼の家である。

長い時間たたずむ家の中に岩絵の具の鮮

やかな赤や緑が目に飛び込んできた。

振り向くとガラス戸にエネラルド色のバ

スが稲積の向こうに消えていった。

イサムはエメラルド色のバスで…

秋野亥左牟の切符・果てしない旅のはじまり

高橋秀夫(随筆家)

イサムさんと縁のあった多種多様な人間がイサムさん
を肴にして集まろうじゃないか、イサムさんの絵や作品
を見ながら思い出をシェアし、これをきっかけに繋がり
を深めていこうじゃないかということで、毎年個展を開
いてきた京都・堺町画廊にてイベントを催します。イサ
ムさんの絵などを展示するほか、毎日ライブ演奏、絵本
の朗読等を行う予定です。(ライブは投げ銭カンパ)
★期間:4月3日(火)~8日(日)
★会場:京都・堺町画廊=中京区堺町通御池下ル
Tel/Fax. 075-213-3636
「イサム~オン・ザ・ロード
おれはここを歩く」
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# by hidesannno | 2012-03-15 22:54
秋野イサム
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「イサム~オン・ザ・ロード おれはここを歩く」に向けて

昨年の11月23日、我々の友人であるアキノイサムさんが亡くなられました。

今時、自宅で奥さんと娘に囲まれて亡くなるというのは、なかなかできないことで

うらやましい限りです。

イサムさんがやんちゃだった少年時代、左翼運動に燃え上がった青年時代、そして

インド・ネパールへの旅以来、絵描きのヒッピーとなって世界を放ろうし、また沖

縄の小さな島で漁師をしながら絵を描いていた時代、そして絵本や各地の個展での

出会いなど、さまざまな人生の局面で知り合った幅広い友人・知人がいます。

出会った時期により、また人によってイサムさんをどう見るかは違いもあると思い

ますが、風のように軽やかに自由な生き方をした人だったというのは共通している

のではないかと思います。

同年代の人だけでなくずっと年下の人間にも気さくに友達づきあいができるところ

も、世間的な価値観から全く自由だったイサムさんの生き方を象徴していると思い

ます。

そのため、実に多様な人達、同時代の人からアーチストやヒッピーや若者達、子ど

も達ともつきあいがありました。

そんなイサムさんと縁のあった多種多様な人間がイサムさんを肴にして集まろう

じゃないか、イサムさんの絵や作品を見ながら思い出をシェアし、これをきっかけ

に繋がりを深めていこうじゃないかということで、4月上旬に京都・堺町画廊(イサ

ムさんの個展を開いてきたギャラリーです)にて、「イサム~オン・ザ・ロード お

れはここを歩く」というイベントを開くことを相談しています。(4月3日(火)~8日

(日))7日はイサムさんの誕生日


そのために次のような点でご協力をいただけたらと思っています。

・展示する作品は、所有している方にお願いして集めたいと思っていますので、お 
 持ちの方はぜひお貸し下さい。


・これまでも個展の折には必ずミュージシャン達がライブを行ったりイサムさんが

トークを行っていましたので、今回も縁のあった人達にライブ演奏や絵本の朗読な

どをお願いしたいと思っています。土日は昼と夜、平日は夜1回、太鼓なしのアコー

スティックを考えていて、すでに4月4日に南正人が来てくれることが決まっていま

す。

・このイベントの会場費、出演者へのお礼、参加者への振る舞い、チラシ代など必

要な経費を賄うため、1口¥2000で今回の集まりの呼びかけ人を募集いたします。

(余裕のある方は何口でもお願いします)

郵便振替口座 00980-6-328251 ヤマギワノジコ へお振込み下さい。振替用紙

にメッセージなどもお願いします。

3月5日までに振込いただいた方は案内状に呼びかけ人としてお名前を掲載させ

ていただきます。

世話人 浜田光(名前のない新聞) 高橋秀夫(八百屋ろ)

    福村祖牛(山水人) 伏原納知子(堺町画廊)

【連絡先】堺町画廊 京都市中京区堺町通御池下る 075-213-3636



福村祖牛sogyu@nifty.com

『山水人』ホームページ http://yamauto.jp/

mixiコミュニティ『山水人』http://mixi.jp/view_community.pl?id=291358
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# by hidesannno | 2012-03-05 22:24
自然じねん
自然(じねん)
12月、母の田舎からみかんが届く。届くといっても宅急便がくるわけでもない。

鉄道便であlる。木箱に入ったみかんを駅に取りに行くのである。

母はかごにみかんを入れ近所に配る。

添えられた手紙を読みながら「さあーお食べ」と炬燵の上にみかんが並ぶ。

50年前の師走はこんな風に始まった。


木箱は物入れや机になった。



源五郎丸さんから新米の餅米。
新大正もちというかってよく作られた品種という。
もみのがらの所が長いのが特徴で、脱穀した後、注連縄(しめなわ)を作るのにうってつけだったそうだ。
餅の大好きな小生は早速、火鉢で。


分けてもらった稲束を入り口にかけた。

ぴぃぴぃとさわがしい

すずめがこぞってついばみにきている。

こんな街中にまさかこんなご馳走が、と思ったことでしょう。


糸瓜とひょうたんしか植えなかったはずなのに・・これはどう見ても冬瓜だ。
根元をたぐってみた。これは去年売れ残った秋山郷の冬瓜を埋めたとこだ。
今夏、どんなにかこの糸瓜いや冬瓜に心和んだことか。
「りっぱな冬瓜」と声かけてくれた九州のおばちゃん、「糸瓜」と言ってる小生にさぞかし怪訝だったことでしょう。
そう、これは冬瓜である。


稲束をかけた下に暮らす愛犬ちび。

今年で17年になる。

人間の年にすると80歳ほどらしい

さすがに昨今は少々よたよたして「家」であるダンボールでだいたい寝ている。

白内障のためか目は見えない

散歩の時、溝に落ちたり、電信柱にぶつかったりする。

情けない顔を見合わせて

「小生ももう若くないよ」と初老の二人連れは

耳にイヤフォンをした若者の後ろ姿を目を細めて眺めているのである。







つづきの村火鉢に火も入りました。お待ちしてます

自然を

自然(しぜん)とは言わず

自然(じねん)と発す。

ただそれだけのことであるが

そう考える時、

生きることも死することも

その中では

一つの現象の明滅です。

あるがままに・・





さらばよ・・イサム

イサムよ

今度の旅は長そうだな

笛は持ったか

時々 吹いてや

青い空に見つけるから




そっちは賑やかそうだな

ななおにも三省さんにもよろしく

こっちはずいぶんさびしいよ

             ひで


秋野亥左牟 2011・11・23永眠

つづきの村で秋野亥左牟の絵本、絵並べてあります。どうぞ、見にきてください
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# by hidesannno | 2012-03-04 16:55
お隣さんはたんぽぽ
そう

ご存知でしたか、

柚子、レモンの木にはとげがあるんです。

特に柚子の棘はとげというより針のようなんです。

収穫は皮の手袋で注意深く一つ、一つ採っていくいくそうです。

夏前には蝉が孵化する最良の木らしい

その棘で鳥もいたずら動物も近かずかないらしい

柚子、レモンの棘、みずからのいのちを守る

生命の不思議。

もうすぐ冬至

美味しい旬の野菜をたっぷりいただき

柚子湯につかり

草木も私達人間も同じこの地で暮らしていることを

あらためて考えますか。
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# by hidesannno | 2012-03-04 15:55
土の匂いのする仕事

便利、早い、安い、かっこいい・・30年ほど前私達の生活スタイルは何でもそんなラベルが張り付いていた。町に暮らし、土の匂いのする仕事をしたいと考えていた僕たちはあふれるそんな標語ではない価値観を探した。それが泥付の野菜だった。「やさしさ」という価値を教えてくれた。それは町の流れとは違ったものだった。不便で時間がかかり、安くにはできないし見た目も悪い。が、これがいい、町に村を創るようなことだった。そう、ほとんど相手にされなかったけどね。古臭い時代遅れの輩と。
手から手と手渡していくことって面倒で時間もかかるけどごまかしたり、嘘ついたりしないから何だか気持ちいいもんです。「やさしさ」って関係なんですな。人と人、人と自然、今なら聞き飽きるほどのことだけど一昔だと鬼っ子みたいな妄想家と思われたよ。
それでも畑にはいつくばって作る百姓の手から届く野菜は不思議な力がありました。「やさしさ」だったんですね。
今ではどこでも並ぶ農薬のない野菜ですがやさしさはちゃんとあるかしら。
あなたの食卓からやさしい町角が人が見えてますか・・・

30年目にふと振り返った。
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# by hidesannno | 2012-03-04 15:51
  

随筆と詩歌
by hidesannno
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